2025年11月29日土曜日

「わたしたちが光の速さで進めないなら」

 


韓国人作家キム・チョヨプのSF作品。



韓国語の作品、多分一番最初は
イ・ランのCDに付属していたエッセイだったように思う。

そこから小説、ノンフィクション読んだけど
外れがないなぁと思う。
外れないのは、まだ翻訳数が少ないから
厳選されているからなのかもしれないけれど
私の好きな空気感がどの本のページの中にもある。


曖昧な意図を行間に隠さないところ。
といって過剰ではなく。
ひんやりとした言葉の肌触りとか。
観念的ではない、切実なフェミニズムと孤独。

ノーベル賞はハン・ガンだったけれど
とても広い韓国文学の裾野があって
彼女が立つことができているのかなと思う。

このSF作品も良かった。
七篇からなる短編集なんだけど「スペクトラム」が好きだ。
映画「ET」を反転したような設定。
深宇宙の惑星で探査船が遭難して
ひとり取り残された地球人が惑星の生命体に助けられて過ごす話。

地球時間で40年の時を経て帰還した女性飛行士が
沈黙を守り抜く。

沈黙の理由は
ヨーロッパ人に発見された南北アメリカ大陸の人々が
どうなったか考えればわかるんだけどね。

なんというかその惑星の生命体の心身の造型と
主人公の感受性が温かい。

「やさしさ」に「善しさ」と漢字をあてているのだけど
ああ、そうだなと腑に落ちる。






ここ最近読んだSFは
どれも「記憶」について思わせる世界観を描いていた。
ある個人をその個人たらしめる記憶。
生命体の記憶。
長い時間をかけて堆積し歴史となる記憶。




みずからの歴史をぼかそうとした社会になにが起こったか?
そのような社会は完全に発狂してしまう。
「鏖戦」グレッグ・ベア



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