2026年10月17日土曜日

「夜の太鼓」

 


石垣りん。
知っているのは、詩人だというこだけ。

ちくま文庫から出た新版が
図書館の「新しくはいった本」の棚に並んでいて
表紙とタイトルに惹かれて借りてきたエッセイ。


1920年(大正9年)から 2004年(平成16年)まで84年を生きたひと。
高等小学校を卒業して、14歳で銀行の事務見習いとして働く。
父、弟妹の生活をささえる。生涯独身。


ひたむきに、あたりまえに、生活して人生を送ったひと。
言葉を紡ぐことに喜びを覚えて、詩を綴り、生活を記した。

彼女の生活は、まず、働くこと。
昭和9年、戦争の前に銀行に働き口を得られたことは
幸運であったかもしれないけれども
14歳の女子の職業的身分は「傭」で、雑用、小間使い的な立場。
いまでいえば非正規か、フルタイムのアルバイトか。
戦後に制度が大きく変わって社員となって
55歳の定年まで働き続けても、どこか報われない心持であったようで。

「男たちの既に得たものは、ほんとうに、すべてうらやむに足りるものなのか。
女のして来たことは、そんなにつまらないことだったのか」
という疑いを持ち続けていたと。
生きづらさとか、フェミ(この略し方キライだけど)といった
感覚?概念?自認の仕方?そんなものもない時代だから
ひとつも声高なところはないけれども
ただ生活し人生を送るだけなのに、女の人の上には
(今だからこう表現できる)ガラスの天井というものが
うんとうんと低いところに設えられていたんだろうなと思う。

それでも、ただただ働いて生活し生きてきたんだよね、女の人たち。
男の人たちも、だけど。


最近、岸政彦のポッドキャストを聴いていて
投稿メールを笑いながら、しんみりしながら読み上げて
なんと言っていいかわからんなぁ、という感慨を込めて
「人生やなぁ」と言うんだけど。
岸政彦が聞き書きするまでもなく
言葉を持った人たちはこうやって「生活史」を
詩やエッセイの形で静かに綴って残している。


生活史的なものでも、ノンフィクション、ドキュメンタリーでも
気がつけば生きてきたひとたちの“人生”を覗くことになるんだけど
人生やなぁ、的な物語に、なにかウンザリしてたりもする。
そういうものを私が嗜好しているにもかかわらず。

橋本治の「草薙剣」や柳美里の「JR上野駅公園口」を読んだ時の
消化しきれない感情に胸焼けするような感覚。
最近は、ほんと人生にお腹いっぱい。
なら読まんとき、って感じなんだけどさ。


でも、日々の暮らしを言葉にしながら過ごしてきたひとの
なんでもない感慨に、惹かれて読み進んでしまう。



夏の日、梅の木肌に手を置いて
「また来年の花に会わせてください」とささやいた
私の願いを聞き届けてくれたのは誰でしょう。

春は来るのではない
生きてこちらが春に到達するのだという感じ方は
残念ながら年のせいかもわかりません。

石垣りん「夜の太鼓」 P107



「生きてこちらが春に到達するのだ」
ああ……、そうだなぁと思う。
たぶん、きっと年のせいだと思います。

春よ来い!などと威勢よくはとても思えないのですよ。
とぼとぼと歩いて(足、重い)どこかに到達するしかない。
強い思いで目指しているわけではないけれども(私の場合)

梅の花や青もみじやレモンの香は
人生やなぁの胸やけに効くので大事です。






2026年10月9日金曜日

花腐しの夏だった。



セイヨウニンジンボク、最後の花枝。




庭の花木の枝を剪定した。

花腐し、という言葉があるけど
今夏の長雨には、庭の花木たちもさすがに草臥れたかも。

あら、「くたびれる」に草の文字がはいってる。
野の草が風雨に打たれて倒れ伏してる姿から?

セイヨウニンジンボクもサルスベリも
花枝を細く長く伸ばしてその先に花穂をつけるので
雨が続くと花穂が含んだ雨の重さで
枝がしなって苦しそうな姿になる。
頭を垂れて草臥れて見える。
晴れていれば風に花枝が揺れてとても嫋やかなんだけど。

ムクゲも、初夏には蕾がたくさん上がってきていたけれど
陽射しがなさすぎて雨に打たれすぎて
蕾のまま落ちてしまった。
ひらいた花もちいさくて、薄い花びらはずいぶん傷んでいた。
長い雨が花の色を褪めさせた。

ほんとうに「花腐し」だった。


そういえば「花腐し」の元は「卯の花腐し」で
ウツギの花を腐らせるほど降り続く梅雨のことなんだけど。

卯の花の可愛らしい白花も大好きで
ベランダで咲かせていたんだけど
根が張ってしまったのでこれも庭に下ろしたいなと思いつつ
良い場所がなくて、鉢だけ下に置いていたら
今年は花が咲かなかったな。


今年元気だったのはシュウカイドウ。
日陰、湿った環境が好きなだけあって
庭のあちこちで芽吹いた株が大きく育って花もたくさん咲いた。
いまも咲いている。
雨の似合う花だ。



*


サルスベリ:花枝を2m以下にしたくて大きく切る。
来年の花付きは良くないかも。

セイヨウニンジンボク:枝がかなり混んできた。
葉が落ちたらもう少し剪定しよう。

アジサイ:株が大きくなった。
木質化してる古い枝を根際から抜こうか。

ムクゲ:横に広がってきた。
通路に張り出してる枝は落とさないと。

ハナウツギ:地植えする場所がみつからない。
鉢替えして、さてどこに置こうかな?

チョウセンゴミシ:カロライナジャスミンと入れ替えようか?
でも、どこに置く?