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2026年2月17日火曜日

「光と糸」

 




 愛ってどこにあるのかな?

 とくとく鳴ってる私の胸の中だよね。

 

 愛って何なのかな?

 私たちの胸と胸をつないでくれる金の糸だよね。









8歳のハン・ガンが書いた詩。

8歳の頃、「愛」という言葉を
私は知っていたかな?
愛ということを考えたことあっただろうか?






「光と糸」の表紙。

ハン・ガンが引っ越した一軒家には
一坪半ほどの中庭があって
そこは北向きで光がほとんど入らない。

その壁に囲われた庭にカエデとライラック
ホスタなどを植えて育てる。
複数の鏡を使って光を植物にあてながら。
15分おきに鏡の角度を変えて。
地球が自転するリズムを実感しながら。






何年か前のインタビューで。

攻撃、争奪、弱肉強食…それらはすべて動物に属している。
この動物的な世界で、植物になりたいと願った。

というようなことを語っていた。



ヒトが植物だったら。
地球の生態系はどんな進化を遂げていたんだろうね。
ちょっと見てみたいね。

文学を読むこと、書くことは
暴力の対極にある、とハン・ガンは言う。

そうだね。植物もまた、そうだね。
 











2025年11月29日土曜日

「わたしたちが光の速さで進めないなら」

 


韓国人作家キム・チョヨプのSF作品。



韓国語の作品、多分一番最初は
イ・ランのCDに付属していたエッセイだったように思う。

そこから小説、ノンフィクション読んだけど
外れがないなぁと思う。
外れないのは、まだ翻訳数が少ないから
厳選されているからなのかもしれないけれど
私の好きな空気感がどの本のページの中にもある。


曖昧な意図を行間に隠さないところ。
といって過剰ではなく。
ひんやりとした言葉の肌触りとか。
観念的ではない、切実なフェミニズムと孤独。

ノーベル賞はハン・ガンだったけれど
とても広い韓国文学の裾野があって
彼女が立つことができているのかなと思う。

このSF作品も良かった。
七篇からなる短編集なんだけど「スペクトラム」が好きだ。
映画「ET」を反転したような設定。
深宇宙の惑星で探査船が遭難して
ひとり取り残された地球人が惑星の生命体に助けられて過ごす話。

地球時間で40年の時を経て帰還した女性飛行士が
沈黙を守り抜く。

沈黙の理由は
ヨーロッパ人に発見された南北アメリカ大陸の人々が
どうなったか考えればわかるんだけどね。

なんというかその惑星の生命体の心身の造型と
主人公の感受性が温かい。

「やさしさ」に「善しさ」と漢字をあてているのだけど
ああ、そうだなと腑に落ちる。






ここ最近読んだSFは
どれも「記憶」について思わせる世界観を描いていた。
ある個人をその個人たらしめる記憶。
生命体の記憶。
長い時間をかけて堆積し歴史となる記憶。




みずからの歴史をぼかそうとした社会になにが起こったか?
そのような社会は完全に発狂してしまう。
「鏖戦」グレッグ・ベア



2025年11月16日日曜日

「ギリシャ語の時間」





とても、良かった。

今年読んだ本のBest、かもしれないな。




ひとが
言葉を発することの
重さ、切実さ、恐ろしさ。

普段はそんなこと微塵も意識にのぼらせることなく
私たちは生きていると思うけれど。

少しずつ確実に視力を失ってゆく男と
言葉を声に乗せることができなくなってしまった女と。
どうやったらダイアローグを形に出来るんだろう。


言葉を求めて言葉に縛られて
言葉に呪われているような。
考え出すと息苦しくなる。

それでも
ひとは、言葉を休ませて
深く息する時をもつこともできるのじゃないか。