2023年11月30日木曜日

ポットマム






菊の花に惹かれることはなかった。

菊って、仏様にあげる花
野良仕事のとなりで咲いてる花
おじいちゃんの花
そんな印象だし
The園芸という感じの
大輪菊栽培とか菊人形とか
遠巻きに眺めてごちそうさまで。

だからこういう八重咲の小花が
密集して咲くポットマムとか
ぜんぜん欲しくないと思ってたんだけど。

農協の市場の片隅に
500円の値札つけて売れ残ってた一鉢を
買う気になったのはナゼなんだろう。

おとといの小春日和が一年の内でも五指に入る
美しい日だったからだと思う。

市場で
白菜やルッコラやカリフラワーや
下仁田ネギなんかをカゴに入れて
レジをすませて
一旦は自転車走らせて家に向かったんだけど
あんまり陽射しが透明できれいで
私、小春日和でしょ?って顔した
黄色いポットマムを思い出して可笑しくて
なんとわざわざUターンして買いに戻った。





自転車の前かごにいっぱい。
午後の光が集まってくるようで
自転車漕ぐのも楽しかった。

写真ぱっと見、巨大カリフラワーみたいだけど。
売れ残りポットマムです。
下からたくさんツボミが上がってきていて
まだまだ咲きそう。

淋しくなってきたベランダに
黄色の塊が視界に入るのも悪くないと思う。










すこし色の褪せて来た花を摘み取る。
穂先剪定したローズマリーと。

ホントはこのくらいの密度で咲く花が好き。
これ、水差しにしてないんだけど
萎れつつもそれなりに菊。


ベランダの鉢には
ちいさなハナアブが集まってきている。
冬至に向かうこの時季
陽だまりのような黄色が嬉しい。
虫も、私も。

 



2023年11月29日水曜日

「夢を見るとき脳は」






ゆうべ、夜を歩いた。




今朝。
目覚めたら悲しみがあった。

夢を見ていた。
どんな夢だったか、覚えていない。

夢が残した感情は
鬱々としたものではなくて
とても新鮮な、でも悲しみとしか言いようのない
キレイなものだった。

それも朝靄のように
すぐに消えてしまった。



2023年11月23日木曜日

シダーローズができるまで





シダーローズ。

ヒマラヤスギのマツボックリが
種を飛ばした後に残す花。




11月の雑木林の足もとでよく見つける。

今年は
枝ごと落ちていた青い球果を見つけて
拾って帰ったのが、10月23日。




これは借り物の写真。
球果の写真撮っておくの忘れた。

まだ固く閉じて松脂も滲んでいた。
青々としたシダーウッドの香りがした。
大好きな匂い。







10月29日
乾燥して球果の付け根から開き始める。




11月6日
すべて開いている。
イメージ通りのマツボックリ。





11月18日
そして崩壊。
サクサクのパイ生地を何層にも重ねた
ミルフィーユのよう。
香ばしい色味。






崩壊して種を飛ばし根元に花を落とす。

種には薄い羽がついていて
くるくる回りながら落下する。
樹高50メートルにもなるヒマラヤスギの梢から
降ってくるのを見てみたい。




 

そのうち
どこか高いところから
そっと飛ばしてみるつもり。


1枚目の写真の奥にあるのは
球果の芯で、種を飛ばした後
樹上に残るので
若い球果を手に入れてなければ
見られなかったね。



2023年11月20日月曜日

The Smiths




映画「ノマドランド」で
Amazonの倉庫で季節労働をするファーンに
同僚が腕のタトゥーを見せる。
The Smithsファンの彼女が
一番刺さった詞だという。

字幕では
「家とは、心の中にあるもの」
となってた。



Home is it just a word? 
Or is it something that you carry within you?
家 それって単なる言葉? 
それとも君の中にあるもの?






When you're dancing and laughing and finally living 
hear my voice in your head and think of me kindly

君が踊ったり笑ったり ついに君として生きる時、
頭の中で僕の声を聞いて 僕を優しく思って



      *

     


The Smiths - Asleep (Official Video)

The Smiths - Asleep (early version) [October/1985] 


Morrissey - Moon River.wmv



     *


ミッシェル時代の、それも初期の頃、まだ学生っぽさが残ってるチバがThe Smithsのレコードを抱えてジャケットのアートワークが大好きでというのをあの回らない舌で嬉しそーに語ってたのが面白くて。





だから聴こうと思ったわけじゃないけど、「Moon River」が去って「Asleep」がやってきたタイミングで映画の中にスミスの詞をみつけて、なんとなく気になっている。
…って、それだけなんだけどもね。



2023年11月14日火曜日

時短キッチン







 階下のひと宛てに東京都から家計の足しにと送られてきた。

お米30㎏か、お米15㎏+野菜か選択肢があって、うちは5㎏買えばふた月くらいはもってしまうので、15㎏と生野菜を希望して申し込んだ。でもその組み合わせは人気らしく、お米と下茹で野菜パックのセットで送られてきた。

カレーシチュー・肉じゃが用に人参ジャガイモ玉ねぎがパックになってるやつ。
それと同じ野菜を細かく切ったミネストローネ用、各3個。

こういうパックを使ったことなかったのだけど、これでカレー作ったらめっちゃくちゃ手間省けて楽ちんだった。お家カレーだから豚の薄切り肉使えば煮込む時間も要らないし、あっけにとられるくらいの時短。
ジャガイモの味とかどうなんだろうと思ったけど美味しかったし。

お家カレーなんて簡単料理の代表みたいなもんだけど、さらに簡単になるんだとちょっと目からウロコ気分。


野菜の皮を剥いて、料理にあわせて切り分けるって、案外手間だったんだな。
そういえば、ジャガイモってでこぼこしてるし皮剥くのちょっとメンドクサイね。芽かきしたり。人参なんかは皮剥かないでOKだから切るだけだけど。
それでも料理って、鍋に火が入ってしまえば時間勝負でゴールは見えるわけだけど、下拵えっていうのが一番地味で手間なんだなと、いまさら実感。
ニンニクや生姜もチューブのものがあれだけ棚にいっぱい並んでるのもそういうことね。

働いて子育て真っ最中のお母さんにはお助け食材だよね。
包丁覚束ない高齢世帯とかも。

スーパー行って同じもの見てみたら1パック310円。
うちのカレー用の鍋でいつもの分量作ると3パック使っちゃったので基本野菜の材料費で1,000円弱はどうなんだろうな、人参ジャガイモ玉ネギは常備野菜だし、よっぽど緊急で仕込まなきゃなんねーってことでもなきゃ(ないなそんなこと)買わないだろうけど。

野菜切るのってメンド―だったんだぁ、と変なこと実感してしまったわ。




あと台所の時短ということでいうとキッチングッズって充実してるのね。
私が持ってるのって、おろし器とピーラーくらいで。
ピーラーもアスパラの袴取るのに便利よ~と友達に聞いて使い始めたくらいでそれが15年くらい前だから台所歴考えたら遅いよな。
小学5年くらいから台所はやってるんだけど、プロの包丁使いの父の手を真似してやってきたから、なんでもかんでも包丁だったのね。

アメリカの料理番組とか見てると、ひとつの作業ごとにキッチングッズがあったりして、なるほど便利とはその瞬間は思うけど、その便利って年に何回あるかな?って感じでモノが増えるのもな。たぶん引き出しの中で忘れられて錆びるのが関の山だし。

そういえば去年、冷蔵庫買い替えの時に台所の片付けしてたら、開かずの引き出しから茹で卵を輪切りにする道具でてきて。あのワイヤーが何本か張ってあるヤツ。それと、エッグスタンドに立てて専用のナイフ?みたようなので花形に切る道具。昭和の食卓はなんでこんなに茹で卵の細工に一生懸命だったんだろ?
The昭和の台所っぽくて懐かしかった。捨てたけど(笑)



包丁使うのは嫌いじゃないし(千切りとかするの楽しい)、隠居で時間はたっぷりあるのでしばらくは時短便利グッズなしでやろうかな。
しかし、こういう普通の人は知ってる使ってる当たり前を素通りする事多いような気もするな私。 ま、いいけど。



2023年11月9日木曜日

「すべての見えない光」

 




読み始めたのは冬だった。
春と長い夏と、立冬を過ぎて読み終える。

数ページを読んで枕元に置く。
何日もそのままで。
続きを読む。

読み難いわけでも読みたくないわけでもない。
先を急ぎたくない物語ってあるのだ。

貸し出し期限が来て図書館に返す。
また借りる。
返して、借りる。
3回繰り返して少しづつ読む。


図書館で借りて読み切れず返した本は
たいていはそのまま縁が切れてしまうけど。

この本はゆうるりと
図書館の棚から連れて帰りたいと思い。
こういう読み方は初めてしたかな。



1ページか
長くても10ページないかな
短い断章が連なって語られる
少年と少女の
1934年から1944年。
それぞれの日々。


ひとの人生の記憶って
どれもこれも断片で
物語れるような冒険譚などなくて。

だから貝殻標本の冷たい感触や
短波に乗って流れてきた月の光や
渡る鳥を見上げたときの空気の匂いや
缶詰の桃の舌触りや
シロップの甘さが
記憶に降り積もってひとを満たしてゆく。


ちいさな幸運が訪れれば
その記憶を渡しあえるひとに
出会えるかもしれない。
ちいさな記憶が
誰かと出会わせてくれるかもしれない。



そんなふたりの断片を
標本箱を開けるように
フルカラーの鳥類図鑑を開くように
ながめていたくて
ゆっくりと読んだ。

ひとつひとつの断章が
133カラットのブルーダイヤの
精巧なカット面のようで
伝説のダイヤモンドを託されたような
気持になる。









2023年11月8日水曜日

Hermeto Pascoal 2023

 



2023.11.1
Hermeto Pascoal




1936年生まれ、87歳。南アメリカ大陸の東岸から太平洋を越える長いフライトに耐えて日本まで来てくれてありがとう。


4年前でさえすごいなぁと思ってたし、このあとコロナになって、ああもうあれが最後のパスコ爺さんだろうなぁと諦めてたので聴きに行けて良かった。
なんかもう生きながら妖精化してるね。音楽の現人神?




秋のおひとりさまホテル第2弾で、都内に2泊3日取ってる日程とたまたま被ったので、ライヴの後の余韻をゆっくり味わえた。ライヴの後、そこそこ混んで倦怠感に満ちた電車で郊外に向かうのも、ついつい明日の献立考えてしまい駅前のスーパー寄ってこうなんてなるのもイヤで。興醒めとはこれ。

今回は初日も友人と会う約束が入ってホテルの部屋でのんびりにはならなかったけど、滞在するというよりは拠点にして出かけるのが向いてるホテルだったのでちょうどよかった。



そうね。
ひとりの時間は、大切。


人生で悔やんでることって唯一、ちゃんと一人暮らしをしなかったことなんだよな。
25歳で実家を出て吉祥寺にアパート借りたんだけど。
家人がやっぱり吉祥寺に住んでて、結局私の部屋で一緒に暮らすようになってしまって。
まあ、それはそれでママゴトが楽しかったんだけど、それで結婚してしまったので「ひとり暮らし」の感覚がない。

静かにサビシクひとり暮らす歳月、味わい損ねたな。
贅沢言ってるけどさ。