駅へ向かう途中の
大きなサルスベリの樹が
幹の途中から伐られていた。
なぜ?
なぜって、問うまでもない。
今年も大きく枝を広げて
たくさんの花を
ほんとうにたくさんの花を
咲かせていたのに。
でもその頃には
サルスベリの木の生えているところの
クリーニング店が閉店していて
なんとなく
なんとなく不安な気持がしていたんだ。
職住兼用の個人店だったから。
店を閉めたら
土地仕舞いするしかない。
なぜって問うまでもない。
だけど
気持が沈んだ。
お気に入りの雑木林を歩いていても
サルスベリのことばかり
考えてしまった。
他人の家の
たかが一本の樹が伐られたくらいで
なぜ。
それもまた問うまでもない。
夕暮れた帰り道に見たサルスベリの
残された幹は
見せしめに放置された骨のようだった。
サルスベリ特有のねじれた白い木肌が
無残だった。
いっそ
家屋が取り壊されて根こそぎにされて
更地になるまで
気がつかなければよかった。