20年か、いや、もっと前だね。
二度目の千年紀が始まる直前だったと思うから。
小さなネットコミュニティの登録を誘われて始めてみたことがあった。
町の育成ゲームだったんだと思う。アバターが出始めたころ。
充分とは言えない選択肢の中から自分のアバターを造って町に住むと、通りがかりの住民から話しかけられる。吹き出しの中の「こんにちは」、3頭身のアバター、ぎこちない動き。
馬鹿々々しくって2、3回ログインしてそれきり放置した。
いまでもそうだけれども、思いっきり“文字の人”なので、あのキャラクターにアイデンティファイするのは無理だったな。
私のゲーム体験はそんな程度で、FFもポケモンも、あつ森もプレイしようと思ったこともなく興味もないんだけど、それが障害になることなく、この「トゥモロー…」を堪能したよ。
永遠の子供、サム。
鼻っ柱の強いお姫様、セイディ。
賢明な守護者、マークス。
彼らの物語が好きだ。
ページの中に時々出てくる3つの点であらわされる数学記号が印象的で。
「∵」なぜならば、と「∴」ゆえに。
なぜならばサム、セイディ、マークスゆえに。
三つの点で表される、三人ならではの関係性。
そんな風に読んだ。
本のタイトルにもなっているTomorrow Speech。
Tomorrow, and tomorrow, and tomorrow
Creeps in this petty pace from day to day
To the last syllable of recorded time;
人生最後の瞬間をめざして歩むにはなにが必要だろう。
3人の物語。
それから、3人が作りあげるゲーム――という物語。
生きてゆくにはなにか、物語が必要なんだと思う。
それとはっきり意識するかどうかは別にして。
実人生では、ゲームのように何度もリセットして再スタートすることはできないけれど、だからこそ、自身のリアルからほんの少しはみ出した「こう生きたい」「こう生きられたら」と思う物語の端っこを夢想したい。
マークスを失って、セイディと疎遠になって、セイディの存在にサムが感じたのは「希望」で。
微かでも、遠くても、希望が感じられるから明日も、明日も、また明日も、、重い足を前に出すことができる。だから物語を最後まで繰ることができる。最後の最後に、希望が置かれてなかったとしても、最後の瞬間に至るまではひとは希望を見るんだろうと思う。
(そうだったらいいな)
ゲームというものが生まれるずっと以前の人が小説を書いたように、70年代に生まれてゲームという言葉を持っていたサムは「いちご」をプログラムすることで物語った。
ゲームの変遷には疎いけれど、ゲームというのが“世界を作り上げる”もので、ゲームというものがこんな物語を生むほどひとを育てる文化になってたのか、と80年代からの40年をちょっと見直すような気持にもなった。
アバターに馴染めなかった私だけど、テキストオンリーではあるけれど四半世紀書き続けて、実人生からすこしズレた、自分で取捨選択した物語をアップロードし続けてきたような気もするし。やっぱり、物語ることは大事なんだな、と。他人様にプレイしてもらえる(読んでもらえる)レベルかどうかはさておき。
散りばめられたアイテム(?)も結構好きだった。
ローリングストーンズ「ルビー・チューズディ」
ジョニ・ミッチェル「リヴァー」
根津神社、涼しくなったら行こうかな。
完全無欠、ひとつの瑕疵もないマークス、出来過ぎ。ゆえに、まあ、そうなるか。
でも、ページ繰りながら「えーやめて、やめて、マークス死なないで」って思ったわw
Thanks,Hanya.
私は実は一度もゲームというものをしたことがなくて。
返信削除でも、物凄い物知りの小説読みの年上の友人に「小説読みだったらRPGのゲーム(多分当時ドラクエだったと思う)は絶対に面白いからやってごらんよ」と言われたことを、なぜかずーーーっと覚えていて。結局何もゲームはやらなかったんだけれど、RPGとシューティングゲームを好む人種はちょっと違うのかなぁ、なぁんておぼろげに思ってはいたりする。
とはいえ、この小説の中の3人は何でもプレイするみたいだけれどね。
あのね、小説の中ですごく好きな箇所があって、97ページの
『「だから約束しよう。こんなことはもう二度としないって」セイディは続けた。「約束して。何があろうとーーきっとつまらないことで相手を怒らせたりするだろうけど、それでもーー六年も絶好するようなことは二度としないって。何があっても私を許すって。私も何があろうとサムを許すって約束するから」それは言うまでもなく、若者が気軽に交わす種類の約束、人生がどんな運命を用意しているか知らないからこそ交わせる約束だった。』
この小説をというか、人生を凝縮したような描写だなぁと思って。若い頃しかできないこういう約束や喧嘩、ある種の裏切りを繰り返してみんな大人になってゆくんだよねぇ、私達。もう、若い頃は過ぎ去ってしまったけれど、若者からオトナになりつつある3人を抱きしめたくなった。
そして、確かに完璧すぎるマークスは物語としてはああなるしかなかったのかもねぇ。
自分は自分の人生しか体験できないけれど、小説や映画は他の人の人生を追体験できるという醍醐味があるよね。そんな風に3人の一所懸命な日々を横で観させてもらった様な気持ちになった作品だった。楽しかったなぁ。
気に入ってもらえて良かった!
「だから約束しよう」
削除このセリフは眩しいよねぇ。
こんな風にまっすぐに「約束」を迫れたこと、あったろうか?って追想してしまった。
若者ならでは、なのかなぁ。約束っていうのも、希望だからなぁ。
でも、これセイディならではかもしれないね。
良くも悪くも彼女はお姫様だから。
サムがこういう強いセリフを言えるようになるのは、いろんなものを失って(失いかけて)から、やっとだしね。
でもでも。
いい加減オトナになり腐った今思うに、20代前半くらいまでは今よりずっとずっと向こう見ずだったし、不安よりも希望のほうが勝ってたかもなぁと
平凡なキャラの私でも思うかな。いやん、眩しいw
はにゃ。さんには、こういう物語をいつもシェアしてもらえて、ほんとにありがたいわ。
私のアンテナから漏れがちな、じんわりと温かい想いが残る物語が多いというのが、なんともいろいろ救われます♪
本でも映画でもアートでも、ほんとうにほんとうに好きなものって逆に誰にでもはお薦めできないから「美藤さん気に入るんじゃないかな」って言ってもらえるのとても嬉しいデス。ありがとね~
とっても時間が経って今更なんだけど。
返信削除>本でも映画でもアートでも、ほんとうにほんとうに好きなものって逆に誰にでもはお薦めできないから「美藤さん気に入るんじゃないかな」って言ってもらえるのとても嬉しいデス。
って、本当にそうなんだよね。自分でも自然とこの本は誰に勧められそう、あのヒトには違うよなって振り分けていて。
音楽も映画もそうじゃない?
で、この本は実際に美藤さんにしか勧めていないんだよー。そんなふうに勧められる相手でいてくれてありがとうと想ったのーーーー!
こんなふうに勧められる相手がいる幸せよ〜〜〜と想ったので、Thank you for being there for me. と伝えたかったのでした。蛇足ながら。へへへ。ありがと。
>自分が読んだ本の楽しさを共有できるって、人生の最大の幸せのひとつだと思う
削除…って、あちらで書いてくれてたけど。
私もほんとにそう思う。これって、「幸せ」なことだなぁ、って。
そしてさ、そういう相手がいるって、案外とっても稀有なことだったりするよねーとも思ってて。
だから、DNで知り合いになれて、ここでも繋がっててくれて、文字通り「有難い」なぁ、って思ってます。
うふふ、感謝の応酬になってるけど、、Thank you.
そしてそして。
数日前に「火星の人」読了しました!
面白かった!映画より何倍も良かったよー。
水のレシピ、水素を用意し酸素を加える、そして燃やす、、とか、はい?よくわかんないんですけど??、でも、面白かったーー!500ページさくさく進みました。
ありがと、をもう一個追加💗
きゃー、「火星の人」、そうだよね。きっと映画よりずーーーーっと面白いだろうと思ったんだぁー(映画見てないけどw)。
返信削除もうさ、あの聡明さとユーモアで、タイトルがオデッセイとかかっちょよくしてなくて「火星の人」なんて泥臭いタイトルなのもお似合いだし。
「火星の人」が面白かった人がまた増えて嬉しいなぁー。にこにこだよ。こちらからも、もう一つありがと❤
💗👍💗
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