あの人は、どうしてるかな
そう思うとき
その人は、遠い。
遠くて、静かで、静かで。
どこか幻のよう。
消息っていう漢字のイメージかな。
「消」は死ぬこと、「息」は生きること。
しょう そく【消息】
どのように・(何をして)暮らしているか。
新明解国語辞典・第三版
ひと月ほど前に
古くからの友人二人と会った時に
共通の知人が亡くなっていたことを知り
後頭部、ぼんのくぼあたりに
その消息がじんわりと残って消えない。
教えてくれた友人二人も
直接の付き合いは途切れていて
亡くなったことは人伝に聞いたのだという。
友人二人と私と、その亡くなった彼女と
そのほかに5人、6人の顔ぶれで
笑いあって過ごした日を思ったけれど
その日々からもう20数年経っていて。
その“消息”としか言えない距離感に
流れた年月の量が実感できなくて
気持がうろうろする。
じつはもうひとり
訃報を目にした方がいて。
ちゃんとした学会誌の記事で
そこで同姓同名などたぶんないだろうと思うので
ちょっと息が浅くなる感じなのだけど
確と知るすべもなく
いや、なくもないのだけど
それを私がしてどうするというのかと思えて
ただ霞のような消息に
薄い溜息が出る。
もっと近しい関係性の中で
生きるの死ぬのを知らされるのもしんどいけれど
この漠々とした距離で届く消息の
とらえどころない薄い寂しさも
なんだか手に余る。
押し入れの奥から出てきた
色褪せた写真を手に取ってしまい
さて、どの引き出しにしまったらいいのか
思いつかなくて困ってる時みたいな。
でも、たぶん、この先
こういう気分になる消息が増えていくんだろうな。
もう輝きも消えたAfterglowのなかを
闇に向かって歩いてゆくような時間。
そして逆もあるんだなと思う。
誰か遠いところにいる知人のところに
消息として私のことが届くことも。
いや、私は、誰のところにも届かないかもしれないけど。
それはそれで、むしろ、それでいいけど。